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例えば、こんな...
第6章 バレンタイン企画
「可愛いね」
歩み寄って腰を抱き寄せる。
腕の中に大人しく収まる小さな身体。額に口付け、ペンダントトップを指に絡めてそこにも一つキスを落とした。
「似合ってる」
ふふっと笑った俺に、真純の頬が上気していく。
「おいで、乾杯しよう?」
背中を軽く押してテーブルの方へ促した。椅子を引いて座らせてからキッチンに戻る。フォンダンショコラをサーブすると
「ふわぁ」
真純が大きく目を開いて口元を綻ばせた。音を立てないようにシャンパンの栓を抜き、グラスに注ぐ。淡いピンクに細かい泡がまっすぐ立ち上がって、真純がまた目を大きくした。
「綺麗……」
「ケーキ食べおわったら、後でベリーのリキュール入れてあげる」
「ベリーのリキュール?」
首を傾げて見上げてくる。
「そう、桐生さんから真純にチョコのお礼だって、帰る間際にもらったよ。冷蔵庫で冷やしてる。リキュールとは言っても真純に合わせてシロップみたいにしたって」
「桐生さんが?」
フワリと柔らかい微笑み。真純は桐生さんの話になると決まってそんな風に笑う。
「そう」
同じく笑って返しつつもチリチリと燻る胸の奥。
桐生さんとは何もない。分かっていても面白くない。
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