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暁闇
第10章 上書きされていく
「まじで? どっちのお姉さん?」
坂本は三人姉妹の末っ子なはずだった。
「上のお姉ちゃん。相手は市役所勤めの公務員らしいよ」
「へえ。安泰じゃん」
「まあね~。地味なお姉ちゃんが、地道に手堅い幸せを掴んだってかんじ?」
「いくつだっけ?」
「んー……確か、30?」
私より8つ上だから、と。
「で、そのまま夜は地元に残ってる子たちと飲むんだー」
「高校のときの?」
「そ。琴音も来るよ。村上も来る?」
「残念ながら明日は仕事」
そっか、と坂本は呟いて。
「……桜井は元気?」
その俺の言葉に
「元気だよ。葉月先輩と仲良くやってるみたい。毎日幸せそうだよ~」
笑って、そう答えた。
それを聞いた俺の心の中は、とても静かで。
そうか、幸せなんだ……って。
不思議なくらい、その言葉をそのまま素直に受け止められていた。