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暁闇
第10章 上書きされていく
「……ちょっと」
コーヒーを口に運びながらそんなことを考えていた俺に、坂本が不満そうな声を上げる。
ん? と目で答えると
「何で私のことは何も聞かないの」
「え? だってお前元気そうだし」
「うわ、ひどっ」
適当っぽいー! と抗議してくる。
俺は苦笑しながら
「はいはい。坂本さんはどうですか」
わざとそんなふうに聞いてやる。
それでも坂本は
「あのねー!」
そう、のってきて。
「私、彼氏と別れたのー!」
そんな告白を、俺に。
「は? また?」
今まで何回このセリフを聞いただろう。
「職場の同僚と付き合ってたんじゃなかったっけ?」
「そうだよー。告白されて、まあまあいいなって思ってたからOKしたんだけど……。
だんだん、今までの彼氏のことやたら聞いてくるようになって。しまいにはそれ持ち出して私のこと責めたりもし出して。
そういうの続くうちに、気持ちも冷めちゃった感じ?」
はあ……と溜め息をついて。
「……なるほどね」
想像するだけで、何だか大変そうだ。