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暁闇
第10章  上書きされていく


「ん。そのときってさ、前の男のことはもう忘れてるわけ?」

「は?」


俺をまじまじと見つめ……そして、はあーん……と、突然にやにやし出す。


「それ引っかかってるんだあー」

「何だよ、それ」

「だから。琴音のこと忘れてないのに他の人にいっていいのか、ってことでしょ?」

「――――っ」


だめだ。こいつには全部見破られてる。
俺は遠回しに言うのを諦めて、苦笑しながら続けた。


「桜井のことは諦めるって決めた。
でも、やっぱり時々、ふとしたことで思い出す。
そういうの、相手からしたらとうなんだろうな、って……やっぱ思う」

「村上は優しいからね」

「……んなことねーし」


いたずらっ子のような目つきをして笑う坂本に、ついそんなふうにつっぱる。


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