この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
暁闇
第2章 花冠の……
幸せそう、か――――。
あらためて、桜井を見る。
……確かに、ずっと浮かべたままのその笑顔。時折、先輩を見上げるようにして。
返された笑顔に、また安心したように笑みを深くする。
あんな顔、付き合ってるとき見たことなかったな……。
そう思って、少し胸が苦しくなった。
「……皆さん、今日はいらしてくださりありがとうございます」
そんな中、葉月先輩が挨拶を述べ始めた。
続けられていくそれらの言葉を微かに耳にとらえつつも、俺の意識は桜井の方にばかりいってしまって。
はにかんだような表情。
俯いて、頬にかかる髪を指で払うその仕草。
そして、俺の大好きなその――――。
思わず俯いて、小さく息を吐く。
……今は、最愛の人へと向けられている、その笑顔。
口元が、少し歪んだのが自分でも分かった。