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暁闇
第2章 花冠の……
「――今後とも、どうぞよろしくお願いいたします」
やがてそう結ばれた先輩の言葉。
拍手と歓声が沸き上がり、俺も顔を上げた。
……少し泣いたのか、桜井はハンカチで目元を押さえていて。
それでも、やっぱり幸せそうに笑っていて。
「――――っ……」
そして突然、目が合った。
少し驚いたように見開かれた桜井のその目。
……途端に表情が、崩れて。
また、ハンカチで目元を押さえる。
桜井、と……。
声にならない呟きが生まれて。
彼女から目が離せなくて。
……少しして。
ハンカチを持つ手を下ろした桜井が、笑った。
間違いなく俺を見て。
泣き笑いみたいになってて。
ああ――――。
少なくとも、今のこの笑顔は俺だけのものだ。
……そんなふうに、思った。