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暁闇
第13章 混乱
「……桜井のことですか」
翔悟くんは、琴音さんのことを口にした。
「え……」
「気になりますよね、当然」
「翔悟くん――――」
口元を、微かに歪ませた彼。
……確かに。
気にならないと言ったら嘘になる。
彼の、琴音さんへの深い想いを知っているだけに。
彼女を諦めると言ったあの日から、もうすぐ10か月――――。
もう、彼女のことは忘れたのだろうか。
その想いには、もうけりがつけられたということなのだろうか。
……気にならないわけが、なかった。
もちろん、私が返事を躊躇った理由はそれだけではなかったけれど。
「……歩きながら話します。
あおいさんには聞いてほしいから」
翔悟くんのそういうところ、好きだった。
相手の気持ちを考えてくれるところ。
ちゃんと、想像してくれるところ。
彼の話を、ちゃんと聞きたいと思った。