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暁闇
第2章 花冠の……
「……村上くん」
目の前で立ち止まった桜井。
上気している頬。少し潤んだ目元。
「来てくれて、ありがとう――――」
そう言って、笑う。
「……ん」
俺は思わず下を向き、息を吐いてからゆっくりとまた顔を上げた。
「……琴音、話終わったら戻ってきてね!」
その場を離れようとする坂本の言葉に頷いて答えると、桜井はまた、俺に視線を向けた。
白いワンピースは、近くで見ると凝った装飾が施されている。
花冠姿も、本当にきれいだったから。
「……桜井に似合ってるよ、それ」
素直に、そう口にした。
「ありがとう……」
嬉しそうな彼女。
いろいろな感情が、俺の中にこみ上げる。
「……ほんとに、おめでとう」
――そう、結局俺はまだ桜井が好きで。
気持ちは全然変わってなくて。
それでも、どうすることもできないそんな感情は、表に出すことなどもう許されない。