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暁闇
第14章 弟
「もちろんOKしたんだろ?」
丈のその言葉には答えず、私はコーヒーにクリームを入れ、スプーンでかき回した。
答えなかったというより、答えられなかった。
本当はそれが正しくて。
「……え。まさか断ったの?」
そんな私の様子に、何かを察したのか。
「嘘だろ?」
ははっ、と。
その呟きから少し遅れるように、乾いた笑い声がした。
「……断ってない」
スプーンで、かき回し続けるコーヒー。
私はぽつりとそれだけを言う。
「何だよ……びっくりしたじゃん!」
彼の声色は途端にほっとしたようなそれに変わって。
でも
「……少し時間が欲しい、とは言った」
その私の言葉に、また。
戸惑うような、信じられないとでもいうように、弟は。
「……は?」
そんな、呟きを発した。
さっきまでの明るかった部屋の雰囲気が、違う空気を纏っていく。
視線を感じて、私は顔を上げた。