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暁闇
第15章 私
それが。
あの日翔悟くんの話を聞いて。
彼が、琴音さんを諦める決意をしたとき。
私ももう忘れよう――――そんなふうに自然に思えていた。
そして、そもそも私の想いって何だったんだろう、って。
だって翔悟くんのような激しさなんてなかった。
相手を……桜井くんを幸せにしたいなんて思ったことなかった。
好意は間違いなくあった。
好きな人の話をする桜井くんが好きだった。
苦しいのに、諦められないという彼の心を聞かせてもらうのが好きだった。
一途に人を愛する彼が好きだった。
こんなふうに愛されたらどんなに幸せだろうと、想像しては、相手を羨ましくも思っていた。
でも、彼と自分の未来を想像したことなどあっただろうか。
……私はきっと、琴音さんを想う彼のそんな姿が好きだったのかもしれないと、そのとき気づいた。