この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
暁闇
第15章 私
思いがけず弟と仲良くなった翔悟くんは、よく家に遊びに来るようになった。
弟とゲームをしたり、楽しく話したりしてて。
私の作った料理を張り合うようにして食べたりして。
私はそんなふたりを見ながら、なんだか弟がひとり増えたみたい――――そんなふうに最初は思っていた。
……けれど、想いというものは変化してゆく。
きっかけは多分、あの雨の日の相合い傘。
自転車から庇ってくれた彼。
翔悟くんが、私の中で、弟から男の人に変わった。
そしていつの間にか、彼に会えるときを楽しみにしている私がいた。
彼との会話に、彼と過ごす時間に、穏やかな幸せを感じるようになっている私に気付いた。
桜井くんとは毎日のように会っていたけれど。
琴音さんと付き合い始めてからは、その想いを聞かせてもらうことなどほとんどなくなっていた。
あくまでも同僚としての付き合いしかない彼と。
時々しか会わなくても、より深い言葉を交わせていた翔悟くんの方が、気になる存在にいつしかなっていたのは自然な流れだったのかもしれない。
ずっとこのままの関係で――――そんな望みを秘かに抱くようになって。
……でも、想いが叶うことはやっぱり考えていなかった。
彼の中には、きっとまだ琴音さんがいる。
諦めることを決めたと言ってはいたけれど、5年も6年も持ち続けていたその想いは、きっとそう簡単には整理できないだろうと思っていたから。
だから、このままの状態で。
仲のいい関係のままで。
それでいいと考えていた。