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暁闇
第15章 私
それなのにあの日、弟は言った。
父と会う約束をしていたため、翔悟くんの誘いを断った日だ。
少し遅れて待ち合わせの店に来た弟は
『さっきそこで翔悟さんに会ったよ。
女の人と一緒だった。デートかもね』
さらりと、そう口にした。
『……そうなんだ』
平常心を装って答えたけれど、心の中は波立っていた。
父が、翔悟さんって誰? と聞いてきて。
私も丈も仲良くさせてもらってるお友達、と説明しながらも、胸が苦しくなる感覚に襲われていた。
そんなの、初めてで。
翔悟くんに、彼女?
……まさか。
じゃあもしかして、琴音さん?
……そんなわけない。
頭の中で、思いついたことを打ち消す。
何度もそれを繰り返した。
翔悟くんに彼女ができたら、今までのような関係は続けられない――――そう思って。
そんなのやだ、って。
私の心はそれを拒んでいた。
桜井くんのときにも思わなかった、それは初めての感情だった。