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暁闇
第15章 私
……ううん、本当の意味でどきどきしたのは、あのときだった。
夜。イルミネーションを見ていたとき。
彼の手が、私の手にぶつかった。
近づきすぎた? と思って、反射的に引きかけたその手が、確かな意志を持った指先にきゅっ……と掴まれる。
え……。
『……だめ?』
微かにだけれど確かに聞こえたその声。
……どうしよう。
これって、どういう意味なんだろう。
周りの雰囲気に流されただけ?
それとも――――。
心臓が、どきどきする。
私は俯いたまま、首を振った。
けれど不意に解放された手。
あ……離された、と思うと同時に、再びしっかりと繋ぎ直されて。
そのとき感じた一瞬の戸惑いで、気付く。
……翔悟くんの手のぬくもりを、嬉しいと思っている自分に。
思わず、私もそっと、握り返した。