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暁闇
第15章 私
そっと手を引こうとすると、翔悟くんは力を緩めてくれた。
離れた手。
電話に出て。
……切って。
また、どうしよう、って思って。
ひとりになって考えたくて。
私から、そろそろ帰ろう、と切り出した。
翔悟くんは、少し難しい顔をして。
何か、考え込んで。
何か、言いたそうにしていて。
私は胸がどきどきしているのを痛いほど感じながら、その場をどうやり過ごしたらいいのか考えた。
そして何か言い掛けた彼を、コーヒーを買ってくると言って、ひとりで店に向かった。
コーヒーができる間の、束の間のひとりの時間。
深呼吸をした。
……何か言い掛けたさっきの彼を、思い出す。
いっそ謝ってくれればいい。
雰囲気に流された、それだけだと。
そうしたら私も、きっと笑って流せる。
そして、今まで通りの仲のいい友達のような関係に、戻れる。
……手を、握られて。握り返して。
それだけで充分、嬉しかったから。
それ以上望んじゃだめ、と強く自分に言い聞かせ、もう一度深呼吸をした。