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暁闇
第15章 私
コーヒーを翔悟くんに渡して。
ふたりで歩き始めて。
再び、口を開こうとした彼に、自分から言った。
私の言葉を肯定して、逃げてくれてよかったのに。
なのに、彼は。
『違う』
そう否定して。
――待って。
今日はまだ、何も言わないで欲しい。
だって、私は何の心の準備もできていない。
翔悟くんの中の琴音さんの存在はきっとまだ大きいだろうと勝手に思ってた。
だからこそ、その感情をある意味安心して抱けてた。
それなのに。
手を繋がれた途端、それは急に現実味を帯びて。
翔悟くんが私のこと――――そんなこと、あるわけないって思っていたのに。
これって、もしかしたら、って。
期待と、戸惑いと、不安と。
そんな感情でぐちゃぐちゃに混乱してた。
こんな状態で、何かを言われても。
きっと私は選ぶことなんてできない――――。