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暁闇
第18章 繋いだ手
車が駅の駐車場に停まる。
映画館は、駅から繋がるつくりだった。
車を降りると、翔悟くんが車の前を回って近づいてきて。
すっ、と。
当たり前のように私へと伸ばされる手。
「ん」
その手を見つめただけの私を声で促す。
……そっと手を出すと、きゅっ……と繋がれて。
「行こう」
そのまま、その手を引かれる。
慌てて早足で彼の横に並んだ。
隣にきた私に、柔らかな視線が彼から送られる。
自然に綻ぶ口元。
当たり前のように、手を繋ぐその行為にときめく。
昨日とは、違うどきどきだった。
昨日は、戸惑いが大きくて。
これは、なんだろうって。
どういう意味で繋がれたんだろうって。
そんな考えで頭がいっぱいになっていた。
でも、今は。
「……付き合うって……こういうことなんだ」
ぽつりと漏らした呟きは、歩いている駅ビルの中の騒がしさにかき消され、翔悟くんには届いていないようだった。