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暁闇
第23章 優しさの連鎖
「……あおいさん」
そして、耳元で囁かれた。
「あおいさんのこと……もう名前だけで呼んでもいい?」
「え……?」
思わず、彼を見る。
「だめ?」
その、甘えてくるような言い方。
きゅん……として。
私は黙って首を振る。
「じゃあ……あおいって呼ぶから」
こくん、と。
今度は首を縦に。
ぎゅ……と。
また腕に力が込められ。
あおい、と。
私の名前を何度も……何度も彼は呟く。
「……っ」
呼ばれるたび、胸が疼く。
まるで彼が、私の内部にさらに深くきてくれたような、それはとても不思議な感覚だった。
そして、好きだよ、と。
そう言って。
「……俺には、あおいだけ」
そんなふうに、続けて。
あおいは? って。
耳元で、そう囁いてくるから。
「……私も、翔悟くんだけ」
素直に、そう言えた。
一生を共にする相手に私を選んでくれた彼。
自信がなく、自分を否定してばかりだった私をこんなにも肯定してくれる。
そうしてまた少し、私は自分が好きになる。
好きになっていいんだと思わせてくれる。