この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
暁闇
第5章 終わらせる決意
……あのとき。学校の廊下で声を荒げて桜井に詰め寄るその人を目にしたとき。
思わずあいだに入っていた。
怯えたような彼女の言動をただ見ているのがつらかった。
守りたくて。助けたくて。
でも――――。
『琴音は俺の彼女だから』
投げつけられたあの言葉は、正直こたえた。
そうだ。俺は桜井の彼氏じゃない。
こんなふうに桜井を追いつめるその男が、彼氏で。
何で俺じゃだめなんだ?
俺にはない何かが、その人にはあるのか?
こんなことをする男のことが、本当に桜井は好きなのか?
俺は、桜井にとっては、こんな男より下の存在なのか?
悔しかった。
苦しかった。
だって絶対、俺の方が桜井を幸せにできる。
俺ならこんなことはしない。
少なくともこんな哀しい顔、俺はさせない――――。