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暁闇
第6章 新たな関係
「今日は『松下さん』に戻ってたから、覚えてないんだろうなと思いましたけど」
くすくすと楽しそうに笑う。
「名前、実は忘れちゃいました?」
「あ、いや、覚えてます……」
「ならいいんですけど」
「……ああもう、マジですいません……」
思わず、大きく息を吐く。
「……他にも俺、何か変なこと言ってました?」
おそるおそる尋ねると、彼女は首を振って。
「言ってないですよ~。
絡んだりとかもなかったですよ?」
「……や、でも。何から何までほんと――――」
初対面だったのに、かなり迷惑をかけまくってしまった自分。
家にまで泊まらせてもらって。
それなのに覚えてないなんて……思わずこぼしてしまった溜め息は、自己嫌悪からくるものだった。
それなのに。
「……翔悟くんのおかげで、昨日は私、いろいろ考えないで済んだんです。
反対にお礼を言いたいぐらい」
松下さんがそんなことを口にするから。
「一緒にいてくれてありがとう、翔悟くん」
そんなふうに……笑うから。
「――――……」
俺は黙って、首を振るしかできなくて。