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暁闇
第7章  記憶の中の雨
 

大学時代。
いつもの三人で歩いていたとき、突然降ってきた雨――――。

たまたま持っていた折り畳み傘。
広げると、すかさず坂本に奪われて。
桜井とふたり、相合い傘で歩き出す。


『やっぱり村上だね! 優しい~!』


坂本の言葉に、申し訳なさそうな桜井。
俺に向けられたその困った顔が可愛いとつい思ってしまった俺は、いいよ、とふたりにそれを貸したまま。
その場を去りがたく、濡れながら、しばらくふたりと歩き続けた。

……後日、俺は当然のように体調を崩し、寝込みながら。
そのときの彼女を思い出し、なんだか幸せな気分にもなっていた。


――俺、あの頃……ほんとに一生懸命恋してたな。


雨が連れてきたその記憶。
伴った感情に浸りながらも、不思議と苦しさは感じなかった。


こうやって、少しずつ思い出に変わっていくのか――――。

    
それに気づいたとき、ほんの少しだけ……なんともいえない切なさが、俺を襲った。



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