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BAR・エロス
第14章 今夜の相手は・・
「バーテンさんは・・
 誰かとマッチングしてくれなかったの?」


「いいえ・・私もこの男って人を
 見つけられなかったから・・」


その時、
うつむいた彼女越しに
こちらを見ている男が目に入った。

一番奥の席に座る、やはり40そこそこに見える男が
私たちのやり取りをずっと見ていたようだ。

私はこれがチャンスと思い、
他の客の相手をしている紫苑に手をあげ合図した。

気づいた紫苑は今行く、と指で合図してから
素早くモヒートをつくり、
私の前へと戻ってきた。


「ごめんなさい、遅くなって。
 モヒート、お待たせしました」


酒を催促したのかと思っている紫苑に、


「ねぇ、あの一番奥の彼、
 こちらの彼女と交渉したいんじゃないかしら。どう?」


私はマッチングを薦めてみた。


「そう、じゃあ梓さんのマッチング、
 試してみましょう」


さっそく紫苑は男に声をかけに行く。
すると男は、彼女の正面に座り直し、


「お話しても・・いいですか?」


少しどもりがちに、それでも彼女を
まっすぐに見つめながら話しかけてきた。

思いがけない交渉の始まりに
戸惑いの色は隠せないようだ。
それも仕方ない。
彼女にとっては初めての交渉なのだから。


彼女が不安そうな面持ちで私に顔を向けたので、
大丈夫、と口を動かし親指を立てた。

この2人が無事に交渉成立となるように、
一人モヒートのグラスを宙に掲げた。


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