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BAR・エロス
第14章 今夜の相手は・・
教えられたとおりに道をたどり
一つ二つと路地を数えながらたどり着いたマンション。
エントランスを前にして、
のけぞるように体を反らして仰ぎ見る。
・・うわぁ、すごい・・
静けさの中に響く自動ドアの開く音に、
びくんと体が反応した。
紫苑の部屋は無機質で、でも生活感が感じられる程度に片付いている。
20階建てのマンションの10階。
ベランダからの眺めは最高。
なんたって見えるものが
六本木ヒルズなのだから。
これ以上贅沢な夜景はないだろう。
窓の外の景色の次は
部屋の中を見て回る。
大きなワンルームなので
見るとこといったらバスルームとかトイレしかないだろう。
しかしそれだけではなかった。
広いウォークインクローゼットをのぞいてみると、
見事なまでに整列して掛けられた
白いシャツにため息を漏らした。
10枚近くあるだろうか。
クリーニングされたパリッとしたシャツは仕事用なのだろう。
他に普段着のシャツが2枚とスーツが2着、
革のブルゾンが1着だけ。
棚にジーンズが2枚たたんである。
さすがに引き出しを開けるような
はしたないマネはしないが、この中だけ見ても
彼の日常は仕事中心なのだろうかという
簡単な想像はつく。
次にのぞいたバスルームには
バスタオルとバスローブが、使ってくださいとばかりに
棚の上に置いてある。
なんでも好きに使っていいし酒も勝手に飲んでいいと言われたが、
まるで私が今夜ここに来ることを予感して準備してあるみたい。
いや・・
私、というわけではなくいつ女が来ても
いい状態にしてあるだけなのかもしれない。
それを裏付ける大きな証拠がダブルベッド。
女と2人で寝ることが前提であることは、
誰が見たってわかるだろう。
背の低い飾り棚が仕切り代わりになっている逆側には、
大きなカウチソファが
わがもの顔でどっしりと構えている。
キッチンの調理道具は見当たらない。
すべて棚の中に収納してあるのだろう。
ここでも引き出しを開けることだけはしなかった。