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BAR・エロス
第15章 紫苑・・
ソファに腰を落ち着かせ、紫苑の動きを目で追った。
私のためにコーヒーを淹れてくれる男の姿は、
ありふれた幸せをもたらした。
ぽってりとした白いマグカップを私の前に差し出す。
一口すするとその味に声をあげた。
「美味しい!
紫苑さん、コーヒーもこんなにおいしく淹れられるなんて
喫茶店もできそうじゃない!」
その味はかなり確かなものだといえる。
時代を感じるコーヒー専門店にも引けを取らない。
「バーの客でたまにコーヒー飲みたいっていう人もいるんだよ。
だからちょっと勉強して
誰に飲ませても恥ずかしくないよう練習してるんだ。
一応プロ意識は持ってるからね」
バーテン、というとなんとなくチャラチャラしている
イメージを持っていたが、紫苑は違う。
努力を怠らない。
知らなかった彼の一面をまた一つ、見ることができた。
黙って味を楽しんでいる私の気を引こうとしたのか
小さく咳払いを聞かせてから
「また・・今夜店に来ない?」
そう言って恥ずかしそうに下を向いた。
彼の中で・・
私への気持ちが変化したのだろうか。
女に振り回されないような
冷静さを漂わせてその身を守っていただろう紫苑が、
連日私に会いたいとねだる。
彼の心の中に私という女の存在が
しっかりと根付いたのだろうかと想像しても、
自惚れではないだろう。
そんな想いに応えたかったが、それはできなかった。
「ごめんなさい・・明日仕事なの。
朝も早めだから今夜はムリだわ・・」
「そう・・」
残念そうな彼の横顔を見ていたら
体の中で彼への気持ちがグツグツと音をさせながら
熱を帯びていく感覚に気づかされた。
「じゃあ明日は?
仕事の帰りに寄ってよ。
今日明日はママが店にでる日なんだ、だから、ね。
いつもの早い時間なら誰にも邪魔されずに話ができるだろうからさ」