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BAR・エロス
第17章 エロスのママ・・
聞いた瞬間
私の口はだらしなく開いた。
まさかママは紫苑が特殊な能力の持ち主だと
わかって雇ったのだろうか?
バーテンの直観を信用して
ママなどという重要な役目をまかせる女を探させるとは。
「もしかしてママさんも・・
紫苑さんに特殊な能力があると思っているんですか?」
は?と首を傾げたママは、あどけない少女のような目で私を見つめ
次に紫苑に視線を向けた。
そして一拍おいてから声をあげて笑い出した。
「篠原さんてほんとにおもしろい方なのね。
紫苑から聞きましたけど、
こうして直接お話ししてみてよくわかりましたわ」
ころころと笑い続けるママを
私の方が穴が開きそうな勢いで見入った。
・・そんな面白い事言った?私・・
身を縮こまらせてママの笑いがおさまるのを待った。
そんな私の様子に気付いたママは、
ごめんなさい、と姿勢を正した。
「それともう一つの理由を話さなければね。
実は昨年ちょっと患いましてね・・
私も心臓のほうがあまりよくなくて。
歳も65ですし、
まだまだ若いとみなさんおっしゃるけど
やっぱり先の事が心配になります。
私はこのバーを守っていきたい。
今は紫苑ひとりに任せきりになってしまっているけど
それでは彼の負担も大きすぎます。
誰か紫苑を支えてくれるビジネスパートナーが必要じゃないかって」
見つめ合う紫苑とママ。
この二人の間には特別な絆のようなものが見える。
面接をしたのだから
体の関係ももちろんあるだろうが、
それ以上を感じさせる何かがある。
それは、
同じように男に、女に、傷つけられた過去が
心を結び付けているのではないだろうか。
「オーナーとしてできる限りのことはしていきます。
篠原さんにお任せしたいのは
雇われママ、という事になりますが、いかがでしょう?
お考えになっていただけたら嬉しいのですが。
もちろん今すぐにとは申しません。
あなたもお仕事なさってるんでしょう。
そんな急にってわけにもいかないのは解ります。
ただ、今の話を聞いて
お考えになってくださるかどうかだけは、
聞かせていただけますか?」
私は迷わなかった。
考える、ということは即答した。