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BAR・エロス
第17章 エロスのママ・・

1人2人と客が増えていくと、
久し振りに店に立つママに声をかける者も増えてきた。

交渉以前に、このママを目当てに店に来る客もいるだろう。
65歳でこの妖艶さだもの。

・・あ、あの客も鼻の下伸ばしてるよ・・

私はいつもの席に座って観察を楽しむ。

この店にしては珍しく
にぎやかな声が響く中、紫苑は静かに微笑みながら
私の前から離れなかった。


「よかった、梓さんが話を聞いてくれて。
 ママもあなたのことを気に入ったみたいだし。
 僕も無事に一仕事終えられたって感じだよ」


「でも驚いたわ・・
 ママさんも私と同じだったなんて。
 そんな私をあなたが選んだなんて」


やっぱり特殊な能力の持ち主である、と、
これで紫苑にレッテルを張ることができる。
そう言うと紫苑はあきらめたようにうなずいた。


「さて、特殊な能力で
 今夜私と交渉しそうな男がいるかどうか、見てちょうだい」


紫苑は店にいる男達をろくに見もしないで、


「いないね、全然いない」


そっけなく言い放った。


「ホントに?
 4人もいるのに1人も?」


私も自分で確かめようとして
男達一人一人に目をやっていると、その視線をさえぎるように
紫苑が前に立ちはだかる。


「今夜は・・交渉しないでよ・・」


なんとなく・・気づいていたが、
やっぱり私の想像は当たったようだ。
紫苑は私が他の男と交渉するのを阻みたかったのだ。


「今夜も僕の部屋に来て。
 話の続き、ゆっくりしたいから。
 ね、いいでしょ?」


こんなことになるんじゃないかと思っていた。

今夜もまた彼の部屋へ行くのなら、
そこで私の今を隠さず話そう。
偽らず正直に話そう。
彼がどう思っているのかも聞きたい・・


「・・わかったわ。あなたの部屋で待ってる。
 それでいい?」


そう返事をした時の紫苑の明るい目元を見たら、
私の顔の筋肉も自然とゆるんだ。


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