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BAR・エロス
第18章 私の中・・
「それぞれに・・
 いろんなドラマがあったのね。
 そんな2人がまず引き合され、そして
 私を見つけ出した・・
 偶然とは思えない・・」


そうだね・・と静かに紫苑はつぶやいた。


「ママが言っていた紫苑さんの直観だけど、
 それだけじゃあないでしょう?
 私のどんなところを見て選んだの?」


神様じゃあるまいし、
なにか彼の心に響くものがあったからこそ、
私を選んだのではないだろうか。

その理由はやはり、聞いてみたい。


「初めて梓さんが店に来て交渉した時、
 ホテル代は割り勘にしようって言って。
 あなたに買われるわけじゃないのよって
 きっぱりと言い切ったのを見て、この人は
 エロスの意味を理解できる人だって思ったんだ」


竹内に、酒代もホテル代も出されたら
買われるのと同じだ、とくってかかったあの時。
大抵の女なら
全部男持ちで当たり前くらいに思うのだろうが、
私は男に借りを作りたくなかったし、対等でいたかった。


「それにあなたは人としても魅力がある。
 話や発想がおもしろいし。
 僕に特殊な能力があるなんて言った人は初めてだしね」


「おまけにバカがつくほど正直だしね」


頬を膨らませて紫苑をにらむ。


「いいじゃない、正直者で。
 それっていい人ってことでしょう?
 人に好かれる、これ客商売の基本だからね。
 そういう点でもむいてると思ったんだよ、梓さんのこと」


いい人だ、と評価されたんだ。
ありがたくその判断を受け入れるとしよう。


「そう・・そう言ってもらえてうれしいわ。
 今の仕事のこととかいろいろ考えなきゃいけない事があるけど、
 前向きに考えてみようと思っているわ。
 もう少し時間をください」


背筋を伸ばし頭を下げると
紫苑も同じように黙って頭を下げた。


「ところでまだ聞いてなかったよね、歳」


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