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BAR・エロス
第18章 私の中・・


そうだった。
過去を話しはしたが、正確に今現在何歳か、
という事は言っていなかった。


「年が明けたらすぐに・・
 51になるの。だから今は・・
 50歳よ」


探るような目で紫苑の表情をうかがった。
自分より10歳年上、とわかった瞬間、
彼の瞳が少しだけ動揺の色に染められた。


「これも偶然?
 私が10歳上なんて・・」


しばらく黙って私を見つめていた紫苑だが、
あきらめたように笑ってから天を仰いだ。


「ねぇ紫苑さん・・私のこと・・
 どんなふうに思ってくれているの?」


自分から言い出したくせに
告白した時のような、目がまわるような緊張感に縛られた。
彼は・・
なんて答えるだろう・・


「自分でもはっきりとはわからない・・
 梓さんのこと好きになりそうなのかなって・・
 でもまだ確信が持てないんだ・・
 ただ、セックスの道具じゃない事だけは確かだよ」


言い終わっても下を向いたまま、
本心を探しているようだった。


「もうずっとこんな気持ちにはならなかった・・
 だからわからないんだ。
 どれだけ好きなのか・・
 でもたぶん・・」


「もしかして・・
 私、彼女に似てるの?」


私の言葉に見せた紫苑の動揺に震える顔。
はじめてみせる弱々しい表情だ。

しかしなぜ、そう思ったのか。
それこそ女の直観ってやつだ。
ずっと恋を封印してきた男が急に、となると
それなりに理由があるものだ。
たいていは、過去の恋愛が大きく影響している場合が多かったりする。
そこから導き出したのがこの問いかけだ。


紫苑は自分の手に視線を落とし、それから頭を振った。
参りました、と揺れる髪から聞こえてきそうだった。


「・・たしかに・・ちょっと似てる・・
 でもだからってわけじゃないからね。
 それだけはわかってほしい・・」


懸命に冷静を装う紫苑を、これ以上
追い詰めるようなことは言うまい。
私は黙って紫苑を抱きしめた。
抱きながら、その髪をなでた。


「私も・・
 あなたに話しておきたい事があるの。
 聞いてくれる?」


急にどくどくと心音が響きだす。
紫苑にもその速度をあげたリズムは伝わったようだ。

私の胸におでこをあてコクリとうなずく。
聞かせて・・と
かすむような声とともに・・



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