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第5章 探そう・・

六本木から麻布。

一昔前なら地図を広げて指先で隅から隅までたどったものだが、
今はなんて便利になったのだろう。

パソコンの画面を前に、検索サイトにあらかたの住所を
入力すれば、ポンと目の前に地図が現れる。
おまけに目印までついて。

今どきはそれが当たり前のことでも、
アナログ世代の私は感動して手を叩いてしまう。


「うわぁすごい！写真まで見れるよ」


いざ地図を見始めると、店を探す前に
その街の様子にいちいち声をあげた。

２０代の頃、世の中が盛り上がり、
小僧である私たちもハデに遊びまわれたあの頃。

今と違ってわりと静かだった六本木の
ディスコやカフェバーで夜通し遊んだ。

・・あ、この辺りに確かあのカフェバーが・・
そうそうこの通り・・・あれ？・・

３０年という時の流れは
建物だけでなく思い出までも塗り替えてしまった。
新しくできた大きなビルの陰で、
私たちの歴史は
日を浴びることなく枯れていった
草花のようになってしまった。


・・さぁ、エロスを探さなきゃ・・

マウスをすべらせ
六本木から麻布という
大雑把なキーワードをもとに地図を眺めた。

そしてもう一つのキーワード。
細い路地の突き当り。
この情報は非常に役に立つ。

見てみると、そういった場所はそんなに多くはない。
細い路地、となるとなおさらポイントは絞られる。

ここか？と思われる場所を拡大して
プリントアウトする。
繰り返す事１４回。
意外と少ない。
この１４枚の地図を片手に
来週の休みから店探しを始めよう。


ＢＡＲ・エロス。

いったいどんな店なのか？
この地図の中にあるのだろうか？
そして・・
セックスの相手は・・
見つかるのだろうか？


大きく伸びをして
窓の外に目をやると、
空は夕日に染められていた。