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BAR・エロス
第7章 1人目・・
またもやいつの間にか
バーテンが彼の横に膝をついてやり取りしている。
「チェックでよろしいですね」
男はにこっと笑って頷いた。
どうやら私の分まで支払いをしてくれるようだ。
「ここはごちそうになってもいいのかしら?
だったら次は割り勘ということで」
私にしてみればごく当たり前の事を言ったつもりなのだが、
男も、そしてバーテンも、
え?という顔で私を見た。
「とんでもない!」
男は慌てた声を出した。
「女性に出させるわけにはいきません。
こういう時は男に任せて」
ありふれた男の言い分に、
対抗心をあらわにしてこう返してやった。
「でもそれって、対等じゃないわ」
またまた男2人は顔を見合わせた。
「私・・あなたに買われるわけじゃないのよ。
酒代もホテル代も男持ちじゃあ、
対等には楽しめないわ」
男たちの低いため息が、
二重奏になって床へと落ちていく。
この女の言い分ときたら・・
そう言いたそうだと思ったが、ここで引くわけにはいかない。
私にだってプライドがある。
男に全部金を出させるなんて、
男にすべてをゆだね、そして支配されることも
良しとしなければならないではないか。
私のポリシーに反するではないか。
一歩も譲らす、
私は黙って返事を待った。
「わかりました。では
ここは各自で、ということで。
せめて次はまかせてください。
男のプライドってやつも守らせてくれませんか」
これから一戦交える男に
これ以上頭を下げさせるのも申し訳ない。
「では次のところは甘えさせてもらいます」
私たちの更なる交渉の最中に、
ちゃんとバーテンはそれぞれの伝票を用意していた。
支払いを済ませ席を立つと、
まったくといっていいほど自然な動作で
男は私の腰に手をまわして
自分の体にぴたりと寄せて歩いた。
男が重いドアを開ける。
出る時、私はバーテンの方を振り返った。
見ると、さっきまで見せていた冷たい落ち着きとはうって変わって
まるで友達でも見送るかのように
歯を見せて無邪気に笑って
左手をあげていた。