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BAR・エロス
第10章 3人目・・
今が・・
チャンス・・!

紫苑に・・

彼とキスがしたい・・
いずれしてくれるなら、今・・


酒を持って戻ってきた紫苑は、
黙ってカクテルを作り始める。
その手元に私の視線を受けながら。

カルアミルクを私の前に置くと
カウンターに肘をついて身を乗り出してきた。

一瞬のすきをついて
彼の腕をつかんだが、簡単に
その手を逆にとられてしまった。

あとわずかで唇が重なる、という距離まで
近づいておきながら、
紫苑はわざと的を外した。
ギリギリ触れない唇・・


「もう・・いずれって言ったでしょう?
 その時までいい子で待っていて、ね?」


もがく私に言い含めてから
紫苑は手を開放してくれた。

悔しい!
なんでこんなにもやすやすと負けてしまうのか。
おまけにまるで子ども扱い・・


「どんなことをしても
 あなたには勝てないのかしら・・
 この前の夜の仕返しのつもりで仕掛けたのに!」


紫苑は目を丸くして首をかしげる。


「この前の夜の仕返しって、僕が何かした?」


「ガンバって・・って、
 私のタイプじゃない男とマッチングさせたじゃない!」


「じゃあなにも・・得られなかった?」


え?・・・
またたくまに表情は固まった。

この男・・
私があの夜男から何かを得られたということを、
まるで知っているかのよう・・

どうして?
どうしてこんなに人の心を読めるのだろう?


「なんでわかるの?なぜ?おしえて!」


この男、間違いなく、持っている。
人並み外れた何かを・・


大きくため息をつき、天井を見上げた。


「得られたわよ・・そしてまた一つ、
 殻を破ることができたわ」


カルアミルクの甘さが口をなめらかにするとともに
唇もべたつかせる。
何もかもが悔しく思えてならないが、
私は彼にあの夜の出来事を
くさらず話すことにした。


「彼は・・
 完璧なまでに私を支配した。
 私はされるままだった。
 でも終わってみるとそれがとても楽だという事がわかった。
 彼、たまには男にすべてをゆだねたら
 楽だよって、教えてくれたわ・・」


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