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BAR・エロス
第10章 3人目・・
「じゃあ、乾杯しましょう」
私はグラスを掲げた。
「なにに、です?」
聞き返しながら彼もグラスを手にする。
「私の・・未来に。そして
このお店とのつながりに・・どう?」
「いいですね・・あなたの未来と、
この店の未来のために・・乾杯」
紫苑がグラスを合わせると、
ガラスの奏でる涼やかな音が響いた。
客はまだ私一人。
紫苑と2人、のんびりと酒を楽しんでいると
ドアの軋む音がした。
振り返ると今度は若い男が入ってきた。
彼は入ってくるなり半べそ気味の顔つきで
紫苑さぁん・・と情けない声をあげた。
回りも見ず、なだれ込むようにして
私の正面辺りのスツールを引き、
座ると同時にカウンターに突っ伏した。
「どうしたんです?まさか・・
またダメだったんですか?」
伏せた顔を覗き込むようにして紫苑が声をかける。
どう見ても訳ありの男。
紫苑を名前で呼ぶところを見ると、
常連客なのだろう。
歳の頃なら30そこそこ。
修よりも若干若いだろうか。
すぐに顔を伏せてしまったので
あまりよく観察はできなかったが、
入ってきた時の印象としては
かわいらしい顔つきだった気がする。
この店の客としては最年少クラスだろうか。
今流行りの細身のスーツの着こなしから、
営業職かなにかと想像させた。