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BAR・エロス
第10章 3人目・・
見る限り、
女にもてないことはないだろうといった
印象の男だが、
こればかりは見た目だけの問題ではない。
本人の意思だとか、相手との縁だとかが重要なわけで
一概に問題あり、とは言えない。
女と付き合ったことのないままむかえた初体験は、
どんなに不安だったろう・・と
慎吾の気持ちを思うと、少し気の毒になった。
「それからしばらくは・・
女の人が近づいてきてもいつもひいてしまって・・
25になってやっと、
告白してくれた彼女と付き合うことになったんですけど
手を出せずにいたら・・
他の男に乗り換えられてしまいました。
そのあとまた彼女ができましたけど・・」
そう言うと慎吾は、しばらく下を向いて
顔をあげようとしなかった。
「彼女とは?」
「がんばってみたのに・・
動けなくて・・
なによこれって・・彼女怒って・・」
震える語尾が私に訴えかける。
ものすごく辛かったんだ、と・・
私もなんて声をかけていいのか迷うほど、
その姿は痛々しかった。
紫苑も私も、そして慎吾も、
少しの間誰も声を発せず
息づかいさえも聞こえないくらい
静かで張りつめた空気が店中に流れた。
ここで最初に口を開くのは
最年長の私の役目だろう。
勢いつけて鼻から呼吸をしてから口を開いた。
「そうだったの・・辛かったわね。
でもね、セックスってその相性ってやっぱり大切なのよ。
男と女って言葉や気持ちだけじゃ物足りない。
体で感じたい。
どれだけ愛してくれているかを
体を使って確かめたいと思う・・
私はそうだわ」
わずかに残っていたバーボンを吸うようにして飲み干してから
カラのグラスを紫苑の前に差し出した。
紫苑は黙ってそのグラスにフォアロゼを注ぎ足し
氷を放り込んだ。
ただただ黙って慎吾の話に耳を傾け、
私の意見を静かに聞いているだけだった。
「で、この店に来たってわけね。
その上司もここのお客さんなの?」
「はい。ここはセックスの相手を
真剣に探せる場所だからって、きっと問題が解決できるだろうって
特別に教えてくれたんです。
で、ここで3人ほど相手を見つけたんですけど・・
どの人もボクが経験が浅くてっていうと
哀れな男って目で見て・・
かわいそうにって同情されて・・されるままで・・」