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LEMON DEPENDENCE
第10章 時を越えて
side 矢野飛鳥


「うふ、ふふふ…」

「………」



頭でも打ったかな?

昨日の晩から、やけに母さんは期限がいい。

いつも朝に弱い筈なのに、今日は何の苦もなく起きていたし、鼻歌を歌いながらウォークインクローゼットの中で服を選んでいた。



「…母さん、今日は機嫌がいいですね」

「そうね…憧れの飛鳥先輩と20年振りに再会するのよ」

「……飛鳥…先輩…」

「そうよ。あらやだ、もうこんな時間!行ってくるわね飛鳥、学校遅れないようにね」

「…はい」



行ってしまった…

何だか心がモヤモヤする。

おかしいな…

あんなに母さんから解放されたいと思っていたのに。

いざ母さんが僕以外の誰かに好意を向けているのを見ると、心がざわつく。


母さんが僕の中に別の誰か…飛鳥先輩って人を見ていることは薄々わかっていた。

だからこそ兄さんや陽生そっちのけで、僕ばかりを溺愛しているのだと思う。


ずっとずっと…

母さんの重い愛情が煩わしくて仕方がなかった。

ちょっと怪我したくらいで、この世の終わりのように騒ぐし…

女の子と話しているだけで、発狂するし…


僕は母さんという呪縛から一生逃れられない…ずっとずっとそう思っていたのに。



「…母さんは、僕のものでしょ?」



何言ってんだ、僕は…

母さんが…僕のもの?

バカな…



「……母さん」



渡さない…

母さんは誰にも渡さない。


気が付くと僕は母さんの後を尾行していた。

常軌を逸していることはわかっている。

しかし…

もう自分を押さえられない…
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