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LEMON DEPENDENCE
第10章 時を越えて
「お待たせいたしました。ご注文のコーヒーをお持ちしました」

「……どうも」



さっきの子だ。

名前は…

神田麗奈さんか。



「ごゆっくりどうぞ」



相変わらず惚れ惚れするほどの笑みで、お辞儀をしてキッチンに戻る神田さん。

僕は無意識に彼女の背中を視線で追っていた。

だから、向かい側に相席してきた人物にも気付かなかった。



「あのウエイトレスが気になるのか?」

「……に、兄さん!」

「よ、飛鳥。久しぶり…てか、何で飛鳥がここにいるわけ?」

「兄さんこそ…」

「俺は家近いから外食しに来た」

「そっか…」



そういえば兄さんも陽生もこの近所のマンションに住んでたっけ?



「飛鳥こそ珍しいな………あ、そういうことか」



兄さんは奥の席を一瞥しただけで、状況を把握したようだった。



「母さんの後をつけてきたのか?」

「………自分でもおかしいことしてるってわかってるけど、止められなくて」

「へえ…飛鳥にもそんなとこがあるのか」

「…母さんには黙ってて」

「どうしよっかな〜」

「…兄さん」

「冗談、冗談。黙ってるって…で、陽生いるみたいだけど…陽生の彼女には会った?」

「…まだ」

「それなら挨拶してこいよ。中々可愛いぞ」

「………」

「相変わらず人見知りだな」

「一緒に行ってやる。飛鳥先輩にも会ってみたいし」

「………」



兄さんのペースに流されるまま、僕は母さん達の席まで連れていかれた。
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