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銀剣士の憂鬱
第6章 後悔
サラは髪飾りを見つめた。
この町にはチェチェが拐われる前にも寄っていた。
その時、香水の匂いをやたらと漂わせ、顔を隠した露店商がしつこいぐらいにチェチェに髪飾りを売り付けようとしていた。
サラはうさんくさいから早く去りたがったが、チェチェは並んでいる様々な髪飾りを眺めていた。
すると露店商は紙に包まれた髪飾りをおもむろに見せ、
「これはめったに手に入らない貴重な物で、身につけた者を守ると言われている。」
等という、うさんくさ過ぎる文句を言ってきた。
(今思えば大嘘つきだ。)
「白く輝いててきれい...」
しかし、チェチェはそれを気に入って買ったのだった。
その後、二人は町を抜けて森に入り、大きな湖まで来たところで休憩した。
チェチェは鞄から髪飾りを取り出すとサラに差し出した。
「...なに?」
「姉様につけて欲しい。黒い髪に映えてよく似合うと思う。」
髪飾りなどつけたことのないサラは照れて、嫌がったがチェチェに根負けしてつけたのだ。
「やっぱり似合う!姉様きれい...」
本来なら美少女のチェチェにそんなこと言われても全く嬉しくないはずだが、真っ直ぐにこちらを見つめるチェチェの顔は嘘も偽りもなかった。
サラは『きれい』と言われて、つい少しだけ嬉しくなり、照れてしまった。
しかし、それで動揺し、徐々に近づいていた魔物の気配に気付くのが遅くなってしまったのだった。
(チェチェ... )
今のサラにはチェチェの無事を祈ることしかできなかった。
髪飾りを大事に鞄にしまうと、サラは地図と図面を眺めながらどう攻めるかを考えた。