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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第2章 3歳児の憂鬱
「風船に埋もれてるココ、メルヘンの国のお姫様みたい。萌え~♡」
大きめの唇の傍、どこか可愛らしいえくぼを浮かべた龍一郎は、まるで、
「俺、偉いでしょ? ココの誕生日祝い、頑張って考えたんだよ? 褒めて褒めて?」
と言わんばかりの有頂天ぶりだった。
「………………」
今は8月半ば。
夏真っ盛りな訳だ。
そりゃあ屋敷内は空調設備が行き届いており、快適な室温が保たれてはいるが。
外ではミンミンゼミが大合唱な中、大量の風船と悪戦苦闘しながら朝食の場に移動させられるとは、何たる苦行。
2階の長い廊下を数分掛けてなんとか進めば、さすがに危険な階段は龍一郎が抱っこしてくれ。
そうして降ろされた1階フロアの様子に、ついに愛らしい顔が剣呑に歪んだ。
(ま~た~か~き~わ~け~て~す~す~む~ん~か~)
未だ身長が90cm未満のココに対し、風船の壁は1m超。
若干 汗を滲ませながら、ダイニングへ向かう道すがら、
「あははっ ココが進むところだけ風船が動くから、どこにいるか一目瞭然だな~?」
自身は187cmの長身の為、高みの見物とばかりに面白がる龍一郎。
さすがに疲れたココは一旦その場で停止し、風船に埋もれながら一息付いていると。
「……? あれ? ココ? ココ~、どこだ~?」
「………………」
「あれ~? もうダイニングに行ったのか? いや、まさか」
「………………」
幼女を見失った龍一郎が、両手で風船を掘り起こしている様子がし。
「ココ、ゴメンって。だっこしてあげるから~。出ておいで~?」
「………………(-_-)」
(何か鬱陶しいから、しばらく隠れてよ……)
まだお腹も空いていないココは、その場にちょんと丸い尻を下ろし、雲隠れを決め込む事にした。