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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第4章  5歳児は達観する

踏み台に乗った状態で洗面シンクに両手を突いた小さな肩は、力無く落ちていた。

何せ周りに手頃な女がいないのである。

龍一郎に連れられ山から下り街に買い物に行けば、勿論たくさんの女性はいるが。

自分の保護者はそんなものには脇目も振らず、

「ああ、ココに新しいお帽子を買ってあげよう!」

「ほんと、何着ても可愛いな~~、ココは❤」

と5歳児にべったりなのである。



「はぁ~~~」と深いため息を吐いたココは、ゆっくりと目の前の鏡を仰ぎ、

そしてまた「はぁ~~~」と嘆息を零しながら、現世の自分の姿をしげしげと見つめる。

(まあ、ぶっちゃけ。私 可愛いしな~~?)

猫のように大きなヘーゼルの瞳はウルウルで。

ぷにぷにのほっぺは薔薇色。

桃色の唇は笑えば、愛らしいエクボが浮かび。

鼻はまだそんなに……だけど、産みの母は高かったから、将来に期待だ。

このまま順調に成長したとして、母の様に手足も長く出るとこ出ている体型になんぞなってしまったら――


ああ、やばい!!

私、このままでは絶世の美女に育ってしまって、

龍一郎はおろか、何人もの男を無駄に泣かせることになってしまうんじゃないの――!?


もう一度念入りに自分の小さな顔を覗き込んだココは、己の姿にうっとりと見惚れ、

「ふっへっへっへっへ~~(・∀・)」

愛らしい唇には到底不釣り合いな、不遜な笑いを零すのだった。



しかし、

若干調子に乗り にょきにょきと伸びていた5歳児の鼻は、

ある日思わぬ人間から、ポキリと折られることになったのである。






(続く……)






※本作は訳あって不定期更新です
 ご迷惑を掛けますがご理解下さいませませ
 <(_ _)>



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