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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第2章 3歳児の憂鬱
ココ失踪事件(?)に懲りた龍一郎の命により、使用人は総出で屋敷中に溢れ返る風船の処分に追われた。
至る所から破裂音が聞こえていた20分間は、さながら中国旧正月の爆竹並みに賑やかだった。
ようやく身長90cm未満のココでも、軽々と移動出来る程まで風船を減らして貰い。
「ごめんなあ……(´・ω・`)」
朝食の間中、ひたすら謝ってきた龍一郎に、ココは溜飲を下げることにした。
薄く広い肩を情けなく落とした18歳に、さすがに気を使った3歳児。
腰掛けていたダイニングの椅子から ぴょんと飛び降りると、
30㎝ほど積もった白い風船を蹴りながら、1m先にいる龍一郎の元へと よちよち向かう。
「ココ、もう怒ってないでちゅよ?」
(だが “やり過ぎ” は禁物だぞ。忘れるなよ~~?)
ヘーゼルの瞳に力を込めながら仰ぎ見れば、小さな身体はあまりにも容易に抱き上げられた。
両脇を支える大きな掌がくすぐったくて。
太ももの上で身動ぎすると、その手は丸っこい後頭部と背中へと宛がわれた。
「本当? ココ」
覗き込んでくるのは、まだ あどけなさの残る男の顔。
そりゃあそうか。
18歳なんて(30女から見れば)まだ高校3年のヒヨッコだ。
幼女の扱いを知らずとも不思議では無い年齢の男が、養育(?)しているのだから、そんなに最初から上手くいく筈も無く。
「パパぁ?」
「ん?」
「お誕生日、ありがと」
少なくとも、転生してからの自分が誕生日を祝われた事なんて、今日が初めてだった。
やり方は少々頂けないが、龍一郎の気持ちや心遣いは充分に伝わったそれらに(ほぼ腹と同化している)胸の内が ほんわかし。
その喜びと感謝を込め、ちっちゃな顔に にんまり笑みを浮かべれば、
「……~~っ ココ~~っ」
感極まった声を上げた龍一郎に、かばっと抱き締められてしまった。
その後も「ああ、可愛いっ」「目に入れても痛くない!」等ほざきながら、幼女を抱っこしていた。