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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第4章  5歳児は達観する

ココが5度目の誕生日を迎えた8月。

夏真っ盛りのその日も、龍一郎とココは御手洗邸のプールで涼んでいた。

「パパぁ~~?」

「ん? 何かな、ココ?」

青系のタイルが敷き詰められたプールの傍ら、藤編みビーチベッドに座るココを、

隣のベッドに寝そべり、小難しそうな本を読んでいた龍一郎が振り仰ぐ。

「この女優さん、綺麗だね?」

小さな指先が指し示す先、音声の消された大型テレビには、

土曜の午前中にふさわしい情報番組が流されていた。

新作映画の宣伝の為、背中の空いたセクシーなドレスを纏った女優、を一瞥した20歳の男は、

「そうか~~? ココのが断然 可愛いぞ?」

ひょうひょうとした口調でそう答えると、また書籍に視線を落としてしまう。

ここ何日も繰り返されている その応酬にもめげず、

ベッドの傍に飾られたカエルの石造の頭を撫でながら、ココは続ける。

ちなみにプールとジャグジーのあるこの施設は、バリ風なのだそうだ。

「……あ、あのアイドル、最近よく見るね? 確かFカップなんだって」

グラビア写真集の告知なのだろう。

胸ぐりの がっつり空いたミニワンピを纏った18歳のアイドルにも、関心を向けんとさせるも。

「Fカップ……? デカ過ぎだろ。それより俺は……」

巨乳が苦手なのか、一瞬 眉を潜めた龍一郎は、何故かこちらへと両腕を伸ばしてきて。

「へ? にゃ……っ にゃにっ!?」

天に向かい両手を合わせお祈りを捧げる、ユニークなカエル石造を撫でていたココが、変な声を上げるのも構わず。

5歳になり ようやく100cmに達した幼女を軽々抱き上げた男は、己の太ももの上に向い合せに座らせてしまった。

「あんなのより、俺の興味はココの新ビキニにあるんだけどな~~?」

「……え゛……?」

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