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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第4章  5歳児は達観する

このくびれもへったくれもない5歳児ボディーのどこに、興味が湧くというのだろう?

イタリアからわざわざ取り寄せたという、今年の春夏新作のフリンジビキニ。

暖色の色使いが愛らしいそれは、ビキニにもパンツにもフリンジが付いていて、大人顔負けのデザインだが。

だが――残念ながら纏っているのは、只の幼女だ。

「ココは ほんと色白だな~~? ピンクやオレンジがとても映える」

「そ、そう?」

ヘーゼルの瞳が、指摘された己の肌へと落ちる。

母はウクライナ人(白人)なので、確かに前世の100%日本人の自分よりは、色白かも知れない。

一応、ちびっこでも女子のココ(中身 三十路)は、褒められて悪い気はせず。

満更でもないハニカミを浮かべ、自分の保護者を見上げたのだが。

「お肌はプリンプリンだし、なによりこの出ベソ! 子供ってかんじで、いいよな~~❤」

ぷっくりしたお腹の真ん中。

お臍の穴から「こんにちは」状態の それを、指先で突いてからかってきた龍一郎に、

“おだてられ 登り始めていた木から 足を滑らした豚” 状態のココは、

「……~~っ!? お、大人になったら治るもんっ!!」

一瞬の絶句ののち、ガキっぽく喚くしかなかった。

前世でも、子供の頃は出ベソ気味だったココは、

高校生になってやっとヘソが引っ込んでくれた(脂肪層に埋没してくれた?)経験を思い起こし、咄嗟に反論したのだが。

「ふ。ムキになったらすぐに ほっぺピンクになるし」

太ももの上でむくれる幼女に、奥二重の瞳を細めた男は、その真ん丸の頬に唇を押し付けてくる有様で。

「……っ やぁ」

(拾われた2歳児の頃ならまだしも、私はもうすぐ小学生なんだぞ! 気軽にチューするなぁっ)

頬に感じた柔らかな感触に、若干動揺したココの心の声などつゆ知らず。

「ああ、他にもピンク色のところがあったな?」

「え……?」

龍一郎のその指摘に、ピンクの花飾りでポニーテールにしていた栗色の頭が、不思議そうに傾く。

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