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春うらら
第17章 麗の過去 中学時代
「もちろん、麗さんの意思も尊重します、もし、他の道に進みたいと思えばそれでもかまいません。麗さんの将来を縛りたいわけではないの、それだけはわかって下さいね。」
「はい、わかっています。それはお婆さんからも聞いています。私は『静香』が大好きですから。『静香』に恥じない人になりたいと思っています。」
そうか、俺たちが遊んでいる時から麗にはお母さんもお婆さんもそのつもりで躾してきたんだなぁ。
「雅さん、あなたも何度も聞いてきたことと思いますが、躾は大切です。
躾とは人間の『品』を育てることです。
人間の『品』というのはにじみ出るもの、長く浸せば浸すほど身に染みてそこから漂います。お婆さんも何人もの人を仲居として育ててこられました。が、本当に今の静香を保つことの出来るのは同じ思いで静香を愛し、小さいころから静香に必要な『品』を持つ人間だけだと。
同じ気持ちでお客様と出会い、心を配れる。
雇われでは出来ない心遣いがあるのです。
だから、麗さんしか『静香』を継いでいけないのです。わかって頂けますか?」
「もちろん、でもなんで今さらその話なの?静香は麗が継ぐってきっと慶兄も俺も疑ったことないよ?何かあった?」
「ここからは私が話そう」と父が母と目を合わせてこちらに改めて向き直った。