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Blindfold
第9章 本物
お姉ちゃんの病室がある階は、バタバタしていた。
「目覚めたって」
「本当に?だって2年も」
「先生も奇跡って」
「信じられない」
見たくなければ眼は閉じてしまえばいい。
なのになぜ
聞きたくないときは
耳は閉じることが出来ないのだろう。
「桜ちゃんっ……!」
目に涙をためた看護師さんが、駆け寄ってきて、私の手を握る。
「本当にっ……よかっ…」
感極まっているのか、言葉が出ないようだ。
ぼんやりして、私も言葉を返せない。
「今旦那さんがね…っ」
また、音が消え去った。
看護師さんの口元を見つめる。
なんて言っているんだろう。
なんだ
耳だって
閉じることが出来るんだ