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Blindfold
第12章 風



「やめてくださいよっ…!折角美容院行ったのに!」




手櫛でボサボサにされた髪の毛を整える。




「だって、すんげぇ顔してるから」



「してないですっ!ホント失礼!」





イライラが募って、こんな人を意識してた自分が恥ずかしい。



結局店長はいつもこうだ。





「そんな睨むな」



「睨んでない!」




そう私が反論すると、店長は余裕そうにフンっと鼻で笑って、また近くのベンチに腰掛けた。



そして、パジャマのポケットに忍ばせていたタバコの箱を取り出すと、一本抜き取って口にくわえた。





「ちょっと……!」




取り出されたライター。



それを奪おうと身を乗り出すと、店長は、桜──と私の名前を呼んだ。



その間、多分1秒もなかった。


でも、スローみたいに時間が流れたような感覚がして、何故かタバコをくわえながらニッと笑ってる店長に目を奪われた。




「──────髪、似合ってる」



「っ……」




突然至近距離でそう呟かれて、トクンと胸が鳴った。



まだ火のついていないタバコの香り。



それがさらに私の胸をかき乱す。








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