この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Blindfold
第12章 風
「やめてくださいよっ…!折角美容院行ったのに!」
手櫛でボサボサにされた髪の毛を整える。
「だって、すんげぇ顔してるから」
「してないですっ!ホント失礼!」
イライラが募って、こんな人を意識してた自分が恥ずかしい。
結局店長はいつもこうだ。
「そんな睨むな」
「睨んでない!」
そう私が反論すると、店長は余裕そうにフンっと鼻で笑って、また近くのベンチに腰掛けた。
そして、パジャマのポケットに忍ばせていたタバコの箱を取り出すと、一本抜き取って口にくわえた。
「ちょっと……!」
取り出されたライター。
それを奪おうと身を乗り出すと、店長は、桜──と私の名前を呼んだ。
その間、多分1秒もなかった。
でも、スローみたいに時間が流れたような感覚がして、何故かタバコをくわえながらニッと笑ってる店長に目を奪われた。
「──────髪、似合ってる」
「っ……」
突然至近距離でそう呟かれて、トクンと胸が鳴った。
まだ火のついていないタバコの香り。
それがさらに私の胸をかき乱す。