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Blindfold
第16章 この恋に気付いて
え……?
と拓也さんに言葉を返したのと同時に、店の扉が開いていたのに気が付いた。
夕日が紅く染まって、やけにまぶしい。
そんな中でも、大きな身体のシルエットで、そこに店長がいることはすぐに分かった。
「桜……」
徐々に目が慣れて、店長の姿が見えてくる。
植えられたリナリア
かつて店長が言っていた言葉
そして、この花の花言葉───
しゃがんだまま、黙っていると、店長は花壇の前まで来て、私を見下ろした。
「……店長…」
色々と聞きたいことがあった。
早とちりしてはいけない。
彼の口から聞くまでは…
「じゃあ、またね」
「えっ…あ!幸ママ」
店から出てきた幸さんに驚いている拓也さん。
幸さんはそんな拓也さんを引っ張って帰ろうとしている。
「ちょっ…俺達也に用事が──」
「明日にしなさい!」
二人の会話が遠くなる。
私はさよならも言えずに、ただ店長のことを見上げていた。