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Blindfold
第16章 この恋に気付いて
無言で差し出された手。
その手をしばらく見つめてから、自分の手を伸ばして掴む。
そのまま軽々と持ち上げられた私。
「………中、入るぞ」
手を離した店長が、そっけなく言って店内に入っていくのを、私は小走りで追い掛けた。
カラン…と音を立てて、扉が閉まる。
店長は背を向けたまま、カウンターの中に入っていた。
どうして何も言わないのだろう…
知りたい。
聞きたい。
そんなことが山ほどあるのに。
「……グラス、拭いてくれるか」
「……………」
何事もなかったかのように、店長が振る舞う。
それがもどかしい。
「店長っ……」
「あと、灰皿、奥に置いといてくれ」
「ねえっ…!」
「それが終わったら──」
「ねぇってばっ…!!!」