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Blindfold
第22章 後輩
盛大な音が店内に響く。
当たり前に、グラスは割れた。
粉々になったグラス。
そんな状況の中、しばらく自分の足元をじっと見つめる。
それから……どうする?
あの子と同じように、涙目で謝ればいいんだっけ…?
慌てて、この破片を拾って、そして指を怪我すればいいんだっけ…?
いや、その前に、店長が駆け寄ってきてくれるんだっけ……?
少し自分の体が震えているのが分かる。
そして、恐る恐る顔を上げて店長を見つめた。
目が合うと、店長が小さく息を吐いたのが分かった。
「桜さんっ…!? だ、大丈夫──」
「──何やってんだ、お前」
慌てる葵の前で、店長は動じない。
見透かされてる。
それが分かって恥ずかしさが私を襲った。
店長とは逆に、手伝いますよ!と椅子から立ち上がった葵を、店長が止めた。
「自分で片付けておけよ」
冷たくそう言い放たれて、ぎゅっと唇を噛んだ。
何も思うようにいかない。
こんなこと望んでなかった。
「帰ります」
「……は?」
「その子のせいで、疲れました」
じんわりと目に涙がたまる。
それを悟られないように私は荷物を掴んで、飛び出すように店を出た。