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Blindfold
第25章 尊さ
週末と週明けじゃ、全然お店の空気が違う。
週明けは余裕があって、ガヤガヤもしていないから、こっちの雰囲気の方が好きなお客もいるかもしれない。
初日から忙しい日にぶち当たっていた葵は、拍子抜けしたようで昨日よりはだいぶ余裕のある接客をしている。
その姿を目で追って、私はオーダーとオーダーの合間を縫って葵に近づいた。
「あの……さ」
ドキドキと心臓が高鳴っている。
私の声に、へっ?と声を上げた葵は、振り返ると口元に手を広げて桜さん!と小さく呟いた。
「幻聴……っ?」
「は……?」
「い、今桜さん私に話しかけました?」
「………うん」
返事をするとパァッと顔を明るくする。
変な子だ。
掴めなくて、私はなんとなく首元に手を当てて視線を外した。
「あの………昨日」
「あっ……そうそうだ……本当昨日は色々すみませんでした! 私迷惑かけてばっかりで本当」
「……いや……」
「今日、人少ないんですね! やっぱ昨日は多い日だったってことです!?」
全然話す間を与えてくれない葵の口元をじっと眺める。
この子、何となく気付いてたけど弱そうに見えて、強靭な精神を持ってると思う。
「そうじゃなくて……」
「そうじゃない…?って…?」
何故か目をキラキラさせて見つめてくるから、やっぱり気恥ずかしくて目を逸らしてしまう。