この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Blindfold
第25章 尊さ
「ごめんなさい……っ、私声大きかったかな…」
大きかったどころじゃない。
釣られて顔が赤くなりそうなのを冷まそうとしていると、また別の客が声を掛けてきた。
「いやーー。確かにね、ここの常連はみんな新入りちゃんと同じ気持ちだよ」
え………
それって……
「どういうことっすか」
また、私の気持ちを代弁するかのように店長がお客に尋ねると、突然ふわりと香水の香りが鼻を掠めた。
「だから、分かりやすいって言ってるでしょ。バレバレなのよ、あんたの気持ちなんか」
「っ………幸」
私服だって、妖艶な雰囲気は消えない。
radiceのオーナーの幸さんは、慌てる店長を見てフッと笑っている。
「あなたたち、見てると焦ったくて面白いもの。そんな様子が見たくてこの店に通ってる人、少なくないと思うわ」
そう言いながら、カウンターに腰掛けた幸さんは私の方を見てこんばんは、桜ちゃんと言って微笑んだ。
「幸さんっ……あ、昨日本当っ……」
「あー! 遊びに来てくれてありがとね〜!楽しかったからまた来てね」
優しくそう言ってくれる幸さんにぺこりと頭を下げると、ヤッホーと呑気な声が頭から降ってきた。
顔を上げると幸さんの後ろから店長のお兄さん、拓也さんが手を振っている。
「拓也さんまでっ……ど、どうも」
色んなことが一気に起きすぎて、頭が混乱している。
「さっきのはどういう意味だよ!」と吠える店長を見るが、この薄暗い店内でも微かに分かるくらい、顔が赤いようだった。