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Blindfold
第25章 尊さ


「ごめんなさい……っ、私声大きかったかな…」



大きかったどころじゃない。


釣られて顔が赤くなりそうなのを冷まそうとしていると、また別の客が声を掛けてきた。




「いやーー。確かにね、ここの常連はみんな新入りちゃんと同じ気持ちだよ」



え………



それって……



「どういうことっすか」



また、私の気持ちを代弁するかのように店長がお客に尋ねると、突然ふわりと香水の香りが鼻を掠めた。




「だから、分かりやすいって言ってるでしょ。バレバレなのよ、あんたの気持ちなんか」


「っ………幸」



私服だって、妖艶な雰囲気は消えない。


radiceのオーナーの幸さんは、慌てる店長を見てフッと笑っている。



「あなたたち、見てると焦ったくて面白いもの。そんな様子が見たくてこの店に通ってる人、少なくないと思うわ」



そう言いながら、カウンターに腰掛けた幸さんは私の方を見てこんばんは、桜ちゃんと言って微笑んだ。



「幸さんっ……あ、昨日本当っ……」


「あー! 遊びに来てくれてありがとね〜!楽しかったからまた来てね」




優しくそう言ってくれる幸さんにぺこりと頭を下げると、ヤッホーと呑気な声が頭から降ってきた。



顔を上げると幸さんの後ろから店長のお兄さん、拓也さんが手を振っている。



「拓也さんまでっ……ど、どうも」



色んなことが一気に起きすぎて、頭が混乱している。



「さっきのはどういう意味だよ!」と吠える店長を見るが、この薄暗い店内でも微かに分かるくらい、顔が赤いようだった。

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