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Blindfold
第25章 尊さ
叩くものを探しているのか、その場から離れようとする店長に私は無理矢理ついていく。
今1人にされたら困る。
そのうちに、もしあれが自分のところに飛んできたりしたら、と考えるだけで恐ろしい。
適当なチラシを丸めたようなものを手にした店長は、そこにいろ、と言いながら私の頭をポンポンと撫でた。
見ていられなくて、目をギュッと瞑ると、パン!!!と軽快な音が鳴り響いた。
「もう大丈夫だ」
そう言って後処理をしている店長の姿にホッと胸を撫で下ろして、私は再びヘナヘナとカウンターに座った。
「あり…がとう…ございま…した…」
怖すぎて力尽きてしまった。
店長がいてよかった……ほんと。
手を洗った店長は、私の隣に立ってフッと笑っている。
「あん時と同じだな」
「…………あん時?」
ってどの時だ……全然記憶にない。
不思議に思っていると、自分で言ったくせに店長はさぁ?ととぼけた。
「相変わらず大袈裟だなぁ、泣くこたぁねぇだろ」
「だって……」
思い出されるゴキブリのフォルムにゾワゾワとして私は自分の腕をギュッと抱きしめた。
あぁ………本当に気持ち悪い。
そして突然頭に手を乗せられて、顔を見上げようとするのと同時に店長は、私の髪をわしゃわしゃと乱した。
「ちょっ…」
「たまんねぇ」
突然の放たれた彼の口癖に首を捻る。
「俺がいんだから安心しろ、な」
優しくそう言われてトクンと胸が鳴る。
よく分からないけど……
総じたら、悪い日じゃなかった?のだろう……か。
そんなことを思いながら、私と店長は上の部屋へと帰った。