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Blindfold
第26章 買い物
「……それは良かったです」
そんなこと言いながら、私は誤魔化すようにオムライスを食べ進めた。
「何より、台所に立つお前の姿が悪くなかった」
なんだ、それは。
意味が分からず、「どういうことですか」と聞くが、店長はうーんと唸りながら目線を上にした。
「なんか良かった」
全く説明になっていないし、『悪くなかった』が『良かった』に変わっている。
「あれだな。桜が俺になんか作ってくれてるっていう、そういう状況も悪くねぇなって思ったって、ただそれだけだ」
そう言いながら、店長はモグモグと残りのオムライスを食べ進めている。
「………店長って、何が好きなんですか」
「何が…って?」
「食べ物、です」
「あぁ」と返事した店長は、最後の一口を食べ終えると、「そうだなぁ」と呟く。
「カレー、とハンバーグ、だな」
その答えを聞いて、それなら自分にも出来そう、と思った。
「意外と子どもっぽいんですね」
「うるせぇな」
「…………今度、それも教えて下さい」
少し恥ずかしいと思いながら、そういうと店長は頬杖をついて私のことをじっと見つめてきた。
「何? 作ってくれんのか?」
「………いや、私もカレーとハンバーグ好きだから。1人の時作れるように」
またバレバレのかわいくない言い訳をして、オムライスを頬張る私を店長は「へぇ、なるほど」と言いながら、笑っていた。